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  梅 奮 闘 記       
 
 田舎から梅が届くのは、スーパーから紫蘇や梅酒瓶が残り少なくなる頃である。

 なので、梅干しを漬けるための三種の神器ならぬ三種の材料(塩、焼酎、漬け紫蘇)を、

早めに買っておかなければならない。

「今年は豊作だぞ、ほれ」

と、兄が大きなボールに山盛りの梅を抱えてきた。3キロはありそう。

さあ、待ったなしの作業だ。洗って、へそを取り、一晩水に浸す。

翌日しっかり水を切ってから漬ける。

熟して落下したのを拾って来るので傷んだ梅もある。

削り取る。軽傷は塩漬け。重傷は冷凍。

後日、冷凍梅はそのまま鍋に入れ、トロ火で煮込んでジャムにする。

翌週も、また翌々週もどっさり届いた。

足らない、足らない、塩も焼酎も漬け紫蘇も。

大急ぎで買いに走る。

走っては、削っては、漬ける。

塩、梅、塩、梅、塩塩塩、焼酎、重石。

こんな作業が毎週続いた。


苦労の甲斐あって夏を過ぎるといい色に。

完熟なので酸味が少なく、果肉もまろやか。美味しい。

で、翌年。また慌ただしいのは大変だからと、材料を多めに買って、待っていた。

梅よ、来い、早く、来い。

ところが、

「今年は全然実が生ってないぞ」

全然? そんなはずは・・せめて1キロくらいはあるだろう。

淡い期待を抱いていたが、悲しいかな、一粒すら来ませんでした。

困っちゃうなあ、漬け紫蘇残されて。

どうしよう、1人じゃ食べきれない。

乾燥させて、刻んで、皆様に、言い訳をしながらお裾分けしたのでありました。
エッセイとカット:まかせ手